ご好評いただいております人材教育コラム-Opinion- Educare PLUSに加え、研究チーム「グロースラボ」メンバーによるフィールド実践コラムの連載がスタートしています。
教育現場の「今、知りたい!」にお答えする、より実用的な内容となっておりますので、是非ご一読下さい。
※当コラムは、-Opinion- Educare PLUSの特別版として不定期にお届けします。
Z世代の新入社員が職場でモチベーションを高め、長く活躍できるようにするためには、彼らの特性に応じた教育・研修が欠かせません。前編で学んだように、Z世代は「個性」「承認」「体験」「根拠」という独自の価値観を重視し、それに応じた動機付けが企業の重要な課題となっています。特に、外発的な報酬や評価に基づく外発的動機付けだけでなく、内面的な興味や楽しさ、達成感などから自然にやる気を感じる内発的動機付けを意識し、内発的動機付けの3大要素である「自律性」「有能感」「関係性」に基づいた工夫が有効でしょう。
教育の現場においては、こうした特徴を理解するだけでなく、さらにそれを活かした研修設計が求められます。
Z世代が自身の「やる気」を引き出し、企業の一員として自走できる力を身につけるためには、彼らの特徴と動機付けの要素を掛け合わせ、相乗効果を生む研修内容を組み込むことが重要となります。
自律性を促し、Z世代の個性を尊重した多様な学習アプローチ、有能感を引き出す承認やフィードバックの仕組み、関係性を深める体験型活動などの工夫が、彼らの主体性や自己成長意識を高めるきっかけとなります。
今回は、こうしたZ世代の特徴と内発的動機付けの要素を踏まえ、Z世代のモチベーションを育む教育とはどのようなものであるべきか、具体的なアプローチを探っていきましょう。
前出したZ世代の特徴と、内発的動機付けの要素を紐づけ、研修を設計すると以下のようなシナジー効果が生まれることが分かります。企業の課題を解決するには、このようなシナジー効果を高める要素を盛り込みつつ、新社会人としての実践教育を取り入れた新人研修が求められるでしょう。
内発的動機付けの「自律性」×Z世代の「個性」
研修設計:
Z世代は、自分のスタイルで学びたいというニーズが強いため、複数の学び方やアプローチを提示します。具体的には、オンラインとオフライン、個別学習とグループ活動、選択可能な課題など、多様な選択肢を用意し、参加者が自分に合った学習方法を選べるようにします。
具体例:
◆デジタルツールを利用した進捗管理。参加者が自分で目標を設定し、達成に向けた計画を立てられるよう促す。
内発的動機付けの「有能感」×Z世代の「承認」
研修設計:
Z世代は定期的なフィードバックを重視し、成功体験や自己成長をモチベーションとします。研修中に頻繁にフィードバックを行い、個々の成果を認めることがポイントです。また、自己評価とフィードバックを組み合わせることで、内発的な動機付けをさらに強化できます。
具体例:
◆定期的なチェックセッションや進捗確認を取り入れ、講師や参加者同士でリアルタイムのフィードバックを行う。
◆自己の振り返りを促すワークシートを導入し、自分の学びを記録し、次の目標設定につなげる活動を推進。
内発的動機付けの「関係性」×Z世代の「体験」
研修設計:
Z世代はインタラクティブな学びを好み、他者との関わりを通じて学ぶ場面で特に成長します。体験型アクティビティやグループワークを中心に設計することで、チームの中での関係性を深め、協力して目標に取り組む力を育成します。
具体例:
◆ワークショップ形式でのディスカッションや、実際のシナリオに基づいたグループシミュレーションを行い、参加者同士が意見を共有し合いながら学ぶ場を作る。
◆チームビルディングに繋がるアクティビティを取り入れ、グループ内で信頼関係を築くことに焦点を当て、協働力の向上を図る。
また、Z世代の「根拠」に注目すると、自社の企業理念を浸透させるための設計も重要となります。
企業理念の理解×Z世代の「根拠」
研修設計:
Z世代は「多様性」「包摂性」「社会的意義」を重視する傾向が強いため、これらの価値観を研修に取り入れ、企業理念や組織文化の重要性を彼らに共感させる内容を構成します。企業の社会的責任やサステナビリティに関する議題を盛り込むことも効果的です。
具体例:
◆企業の社会的意義をテーマにしたディスカッションやケーススタディを行い、Z世代が自らの価値観と企業のミッションを結びつけて考えられるようにする。
◆多様な価値観を尊重する職場作りについて考えるワークを行い、多様性を受け入れる文化を醸成。
Z世代の特徴を踏まえた研修設計を行うには、既存の教育体系から脱却し、新たな尺度で学びを考える必要があります。今回学んだように、Z世代の新入社員が組織にとって力強い存在となるためには、彼らの特性とモチベーションの要素を組み合わせた研修が鍵となります。個性に合った自由な学習スタイルや、フィードバックを通じた承認、体験重視の学び、企業理念に対する共感を織り交ぜることで、Z世代が組織にとって理想的な戦力へと成長するための後押しとなるでしょう。これらのシナジー効果を活かした教育が、Z世代の定着率を高め、企業の持続的成長に繋がるのです。効果的な新人教育を取り入れ、自ら走り続けるZ世代を育成し、よりよい職場環境を作りましょう。
2024年11月発行