テナント会を“学習する組織”へ ― ESから始まる再構築

なぜ今テナント会か ― 「人と関係性」への再注目
商業施設(以下、SC)やディベロッパー(以下、DV)、接客現場を取り巻く環境は大きく変化している。
消費行動の多様化、ECの普及、深刻な人手不足、スタッフの流動化。
こうした構造変化の中で、改めて問い直されているのが「テナント会」の存在意義である。
かつてテナント会は、開業時の理念共有の場であり、出店者同士が顔を合わせ、施設づくりを共に考える共同体的な機能を持っていた。
販促企画も、地域イベントも、テナント自らが議論し、主体的に動いていた歴史がある。
しかし近年、活動の形骸化や横のつながりの希薄化を指摘する声も少なくない。
契約関係のビジネス化、外部資本の増加、定期借家契約の普及により、関係性はよりドライになった。
だが私たちは、ここにこそ可能性があると考える。
施設の競争力の源泉は「人」である。どれほど魅力的なテナント構成であっても、そこで生き生きと誇りをもって働く人がいなければ、顧客体験価値(CX)は向上しない。
個店で働く一人ひとりが施設に愛着を持ち、「このSCで働きたい、もっと盛り上げたい」と思える状態――そのエンゲージメントの醸成こそが、これからの施設価値を左右する。
テナント会は単なる運営組織ではない。立場を越えた対話を生み、施設全体の方向性を共有する“共創の基盤”である。
なぜ今テナント会か」という問いは、「SCエンゲージメントをどう再設計するか」という問いに他ならない。
テナント会の現状と課題
現場ではスタッフの入れ替わりが激しい。DV側の運用効率化(省力化)や人員不足により、施設横断の交流は減少している。「隣の店舗の顔が分からない」という声も聞かれる。バックヤードで自然に生まれていた対話は減り、情報は共有されても、関係は深化しにくい状況にある。
顕在化しているのは、テナント間や、テナントとDVの心理的距離の拡大、店長会議のマンネリ化、そしてテナント会活動が各店舗の現場課題と結びつきにくいといった問題である。だがこれらは単なる運営課題ではない。関係性設計の問題である。
組織論の観点では、こうした関係性は「関係資本」とも呼ばれる。信頼や相互理解といった無形の資産である。この資本が蓄積されている施設ほど、困難時の連携がスムーズであり、顧客への一体的なサービス提供が可能となる。

続きは、SC協会月刊誌「SC JAPAN TODAY」2026年6月号をご覧ください。










