vol.4 ESを超えたEX 従業員のパフォーマンスを最大限に引き出す 人材教育のカタチ

EX活性化によるワーク・エンゲージメントの向上
今回の‐Opinion- Educare PLUSでは、「EX」というキーワードに着目し、次世代型人材教育のカタチについて考察してみましょう。
近年、人材教育の現場ではEXという言葉を耳にすることが多くなってきました。
EXとは、Employee Experience(エンプロイー・エクスペリエンス)の略称で、「従業員体験」と訳されます。
EXは、従業員が社内で経験する戦略、方針、施策、検討プロセス、人間関係、協力・サポート、福利厚生や報酬制度など様々な要素を幅広く含む概念です。
さらに大きな目で見ると、その会社で働くことによる経験や価値全てのことを指します。
組織に愛着を持ち、従業員と企業が一体となって相互に成長し合い絆を深める関係を指す「ワーク・エンゲージメント」を高めるためのカギとなる各要素が、EXであると言えるでしょう。

欧米では2017年頃から注目されており、毎年“Employee Experience Summit”が開催されるなど、人材教育を考える上での欠かせないキーワードとなっています。
GoogleやFacebook、Airbnbをはじめとする多くの海外企業でも、EXを高める施策を積極的に取り入れ、ワーク・エンゲージメントの向上に成功しています。
求められる顧客体験(CX/カスタマー・エクスペリエンス)とEXの向上
今なぜワーク・エンゲージメントを高めるためのEXが注目されているのでしょうか。理由は大きく分けると4つあります。
まず1つ目は、人材獲得競争が激化していること。近年、若手・中堅層の間では定年まで現在の会社に勤める気のない人材が増加しています。
従来以上に人材の採用や引き留めが困難になっており、魅力的な会社にするためのEX向上が欠かせません。
2つ目は、人材の多様化です。
年齢・性別・国籍などの目に見える多様性に加え、働き方に対する考え方など、目に見えにくい個人の価値観も多様化しています。
会社では、従来以上の多様なキャリアパスなどを準備し、EXを整えることが必要になるでしょう。
3つ目は、テクノロジーの進化です。
多くの従業員は日常から様々なデジタル技術に触れ、企業内においても同様の体験を求める傾向にあります。
テクノロジーが進化し、様々な体験を提供できる現在においては、ITを駆使したEXの向上も求められています。
そして最も注目すべきなのは、4つ目の、顧客体験(カスタマー・エクスペリエンス/Customer Experience/CX)への注目度の上昇です。
近年、「モノ」を売ることから「コト」を売ることへと産業の潮流が変化しています。
製品そのものによる差異化が困難になり、商品のライフサイクルも短期化する中、サービスの質を高めることがビジネス成功のカギとなるでしょう。
質や価格だけでなく、商品・サービスに関わるすべてのフェーズでCXを向上させ、ファンになってもらうことが重要です。
従業員は顧客へのタッチポイントであるため、顧客体験(CX)を向上させるためには、EXを高めることが有効です。
やる気の高い従業員は顧客によりよい体験(高いCX)を提供することができるため、ESとCSの関係性においても言及されることが多い、「サービス・プロフィット・チェーン(※1)」の図は、EXとCXにも応用することができるでしょう。
単純に、「お客様は神様」として従業員に努力だけを求めるのではなく、顧客に良いサービスを提供するためにも従業員の幸せを大切にする、という意識へと変化する必要があるのです。

サービス・プロフィット・チェーン(SPC)とは、企業が従業員を大切にすることで、従業員のサービス品質が向上し、その結果顧客の満足度、そして企業収益の向上につながるという考え方。
1994年にハーバード大学のヘスケット教授とサッサー教授らが”Putting the Service-Profit Chain to Work”という論考で発表された。
ES(従業員満足)とワーク・エンゲージメント及びEXの違い
それでは、従来より教育の現場で重要視されてきた「ES」(エンプロイー・サティスファクション/Employee Satisfaction/従業員満足)とワーク・エンゲージメント及びEXの違いはどういったものなのでしょうか。
ESは、上司や同僚、報酬・評価、戦略、施策といったさまざまな側面から、自社で働くことに満足しているかどうかについて、「従業員が自身の物差し」で測定するものです。
従業員が、組織や仕事内容、職場の物理的環境や人間関係などにどの程度満足しているかを示す指標となります。
それに対し、ワーク・エンゲージメントは、どれだけ能動的に自社に働きかけようとしているかについて、「会社が目指す方向性や姿を物差し」として評価するものです。
従業員が企業や職場の同僚などとの関係に価値を感じ、積極的に貢献したいと考えている度合いとも言えるでしょう。
そして、ワーク・エンゲージメントを高めるための要素となるEXの各項目が、ワーク・エンゲージメント向上のための指標となります。
米国最大の調査会社であるギャラップ社は、ワーク・エンゲージメントが企業のKPI(重要業績評価指標)にどんな影響を与えるかを調査しています。
この結果によると、エンゲージメントの高いチームは低いチームより、収益性が22%、生産性は21%、EPS(株価収益率)は47%、顧客満足度も10%上回るという結果が出ています。
一方で、離職率は大幅に低く、事故や品質の欠陥も少なく、欠勤も少ないという相関も明らかになっています。
このように、EXの活性化により業績がアップするという因果関係も証明されているため、成果が見えやすいのもEXの特徴です。
EXと現場教育
商業施設などの接客の現場ではどのようにEX活性化のための施策を取り入れるべきなのでしょうか。
EXを活性化させるためには、定期的にEXの項目に沿った従業員の状態を観察することが欠かせません。
まずはEX調査を行い、現場毎に異なる課題を抽出します。
一元的なソリューションではなく、一つ一つの課題を認識し、現場に即したマニュアルの作成やサポート体制が必要となります。
抽出されたEXの課題に即したテナント会運営のブラッシュアップや効率化を図り、自己成長や施設への共感性を促進する教育活動が重要となります。
EX活性化による成果は見えやすいため、現在の課題を捉えたうえで、次年度に続く施策を構築することも容易になります。
このように、現場の課題を把握し、ソリューションを取り入れることでEX活性化を図り、ワーク・エンゲージメントが高い状態を維持することが、CX向上と業績の改善に繋がっていくでしょう。











